不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
「きれいだね、伊都ちゃん」
「律くんこそ、目が合わせられません」
その道のりの中で、どの選択が正しくて、どれが間違いだったのか。
それはまだ分からないことの方が多いけれど――。
「裾、踏まないようにね。こっちにおいで」
そう言って、最愛の人が差し出してくれた手を取ったことだけは……正しかったと。
自信を持って私は言える――。
お互いに大学を卒業して、2年後。
私達は今日、結婚する。
律くんの海外進出が決まったという話を本人から聞いてすぐ、『じゃあ私と結婚してください!』と勢いあまって言ってしまったことを思い出すと未だに顏が赤くなる。
律くんはそのあと長いあいだ大爆笑して、それから『格好つけたかったところ、全部伊都ちゃんに全部持ってかれちゃった』と言って、再度言い直してくれた。
『俺と、結婚してください』と。