不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
「……お邪魔しまーす」
体育館シューズで彼らの衣服を踏んだらマズイと思い、私も靴を脱いで点検を始める。
壊れたロッカーはなし、ウォーターサーバーも元気だ、電気もちゃんとつく。
生徒会の次に面倒くさいと言われている体育委員になってしまったのは、私がクジ引きで"ハズレ"を引いてしまったから。
最初は青冷めるほど嫌だと思っていたけれど、実際にやってみると同じ委員の人達も先輩もみんな優しくて、やりがいのある仕事だと思った。
それに案外楽しかったりもする。
「よし!急いで委員長に持っていかなきゃ」
「お疲れさま、伊都ちゃん」
「おー!南野さんじゃん!」
「わわわっ!り、律くん!?それにタケちゃんも……ど、どうしたんですか?」
「休憩だよ。伊都ちゃんももう終わり?」
「は、はい。今終わったところです」
点検を終えて部室を出ようと扉の方へ振り返った先、タオルを首にかけてそこに立っていたのが律くんとタケちゃんだったから、思わず変な声を出してしまった。