不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。






「球技大会のときに怪我した足とおでこはもう平気?」


「あ、はい。おかげさまですっかり……って、んんん!?」



"すっかり良くなりました!"と言おうとした途端、「見せて?」と言って何の前触れもなく私の前髪を掻き揚げて、傷を確認する律くんに……息を呑んだ。





ふわっと香る石鹸のにおい。


全身に、力が籠る。





「じ、実はまだ少し痕が残っていまして!その!」


「ううん、このくらいなら俺全然気にならないし大丈夫大丈夫」


「……へ?」


「でも気を付けなね?見た目がどうこうよりも伊都ちゃんに痛い目に遭ってほしくないから。いい?分かった?」


「は、はい……!」





どういう意味なのだろうかと考えているその横で、タケちゃんは「っつ~!律っ、お前天然かよこの野郎~っ!」と顔を真っ赤にしていた。


でも一番真っ赤になりたいのは私のほうだよ。






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