不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。





家がお隣さんという理由から、お母さん同士が仲良くなることはもはや必然で、だから私と悠太くんが顔を合わせる頻度もそれに比例するのは仕方のないことだった。



知らない土地に知らない町、プラスして知らない子に会うなんて、当時の私には荷が重すぎるあまり人見知りを存分に発揮してしまっていたところへ、ガツンとひと言『なんでキミ毎回そんなにモジモジしてんの?ウザいよ』とクリティカルにぶつけてきたのが悠太くんだ。



あの頃はなんて冷たい子なんだろう、と思っていたのだけれど、今思い返せばあのひと言があったから、私は怒りと羞恥に任せて大胆になっていけたのかもしれない、と懐かしんで笑った。






「……なんかいいことでもあったの?」


「うわっ!あ、おかえり悠太くん。あと部活お疲れ様」


「伊都も、1人でお疲れさん。それ、俺洗っとくからおばさんの方の仕込み行ってきていいよ」


「分かった!じゃあ、これ水に浸けて置いておくね」



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