不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
「……え?」
「俺立て替えてあげるから、購買行きなよ」
「へ!?い、いやいや!ダメです!受け取れません!」
「でも購買のおばちゃん、早くしないともう帰っちゃうよ?体操服、買うんでしょ?」
「で、でも」
「心配しないで。俺一応バスケ部員だから」
「でも、だからってこんな大金受け取れません……」
「じゃあこの募金箱抱えて持ってく?」
「いや、それはちょっと」
今日はじめて会話をする、名前も知らない彼を私の不運に巻き込むわけにはいかない。
渡されたお金が100円や500円なんていうレベルの金額じゃないことも然り。