不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
「ねぇ、伊都ちゃん。また今度、試合見に来てくれる?」
「も、もちろんです!是非!」
「試合の感想も聞いていい?」
「ま、任せてください!試合後は興奮冷めないままペラペラ喋っちゃうと思いますけど、それでもいいなら!」
「じゃあ今度伊都ちゃんの家に行ってもいい?」
「はい……って、えぇ!?い、家ですか!?」
腕時計の針が指針を刻むたびに暗くなっている空のせいで、律くんの顔はぼんやりとしか見えなくなっている。
だけど真っ直ぐに私を見て言っていることだけは分かった。
「うん。"今"の伊都ちゃんを、俺にもっと教えて」
「わ、分かりました!」
律くんが私の家に来たいと言った。
日にちも時間も何も決まっていない、ただの口約束だというのに、ドキドキと胸の鼓動は一瞬にして早くなる。
ドキドキし始めたからまた、律くんのことを見られなくなってしまった。