不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。






だからきっと今日は文化祭初日ということもあって、絶対にいつもの何倍も忙しかったんだ。


そんな多忙の中で、不運にも私にぶつかってしまって時間を取らせたことを申し訳なく思う。






「あ、あの私はもう平気なので、えっと、お時間を取らせちゃってすみませんでした!」



「伊都ちゃん、ここは謝らなくていいところだよ」



「でも……」



「むしろ、すっごい痛がってこの堅物生徒会長におんぶでもねだったらいいんだよ」



「えぇ!?お、おんぶ……」



「まぁおんぶは冗談だけどね。実際にそんなことしてたら俺全力で止めに入るけどね」






律くんはジッと生徒会長を見上げながら、ニコリともしないままそう言う。



どうしたんだろう、なんだかいつもの律くんじゃない気がする。





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