不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
律くんと2人きりで歩く、この3階の廊下は静かだ。
今日は学校全体がお祭り騒ぎだっていうのに、そんな賑やかな声も一切、今の私には届かない。
「生徒会長ってさ、実はバスケ部キャプテンの双子の兄だってこと、伊都ちゃん知ってた?」
「えぇ、双子!?バスケ部のキャプテンって、体育委員の委員長の……瀬戸、先輩?のことですよね?」
「そうそう、その人。体育委員の仕事が生徒会の次に多いのは、瀬戸兄のせいなんだって。バスケ部の部費だって毎回ギリギリまで削減しようとしてくるから、生徒会と俺らバスケ部めっちゃ仲悪いんだよ」
「そんなバチバチの因縁があるとは知りませんでした!」
律くん曰く、瀬戸先輩は双子で生徒会長を務めているお兄さんととても仲が悪く、小さい頃から《頭がいい方》《バスケで有名な方》と周りから無意識に対抗心を煽られてきたことが原因らしい。
私たち体育委員の仕事量が異常に多いのは、生徒会長である瀬戸先輩兄の方が、体育委員の委員長を務める瀬戸先輩弟にどんどん割り当てている所為だとかナンダトカ。
律くんは瀬戸先輩を「根っからのリーダー気質はお互い変わんないのにね」と言って目を細めて笑った。