不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。





「結果残さなかったらさ、俺ら来年からボールもモップも買えなくなっちゃうってわけ」


「だ、大丈夫です!だって律くんも瀬戸委員長も、タケちゃんだって、みんなすごい部活熱心だし毎日頑張っているんだから、絶対結果残せます!ウィンターカップの予選だって堂々の1位通過だったし!」





律くんの目の前だということを忘れてグッと拳を強く握り締めて、勢いよくガッツポーズを繰り出したことを後悔しながらも、「ふっ!」と笑ってくれた彼を見て私も同じように笑った。




生徒会長を務めるほど頭のいい瀬戸先輩兄も、体育委員の委員長とバスケ部のキャプテンの両方を務める瀬戸先輩も、どちらにも特化していない平凡な私から見ると、同じくらい眩しく見える。







私にも何か1つ、自信を持って大きな声で言える特技があればいいのだけど。





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