不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
「そうだ、伊都ちゃん普通に歩いてるけどどこも怪我はない?足捻ったりは?」
「あ、律くんのおかげで本当になんともないです!ありがとうございました!」
「そっか、よかったよホント。さっきのは結構焦った」
「私、小さい頃から怪我には謎の免疫があるのでご安心ください!」
少し悲しい気もするけれど、これが私の唯一の特技なのかもしれない。
小学校1年生の頃、洗濯物から返ってきたスカートの中にハチが潜んでいたことを知らずに内ももを思いきり刺された時は、慌てず無表情で毒を絞り出したこともあるし、小学校5年生の学芸会の時に誤って舞台から落ちても、きちんと頭を守って死を免れたこともある。
多分、海に流されて無人島に辿り着いたとしても、きっと1年は難なく生きていられる気がする。
「うん、伊都ちゃんが本当に怪我しやすい子だってことはここ最近でめちゃくちゃ分かった」
「ほ、本当に情けないですけどね」
「でも、なるべく気を付けて?伊都ちゃんが俺の目に届くところにいる時は絶対助けてあげる。だけどもし伊都ちゃんが1人の時だったら……って考えたらホント心臓に悪いから」
「……っ」
「ね?俺をあんま不安にさせないで?さっき俺バスケの試合の時より瞬発力あった気がするよ」
「す、すみません!」
「伊都ちゃんの不幸体質、俺に移っちゃえばいいのにね」
「!?」