エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
偽恋人を演じるためだとわかってる。
けれども上司というフィルターをはずして、黒く澄んだ真剣な眼差しを見つめていると、一気に顔面が熱くなった。

今鏡で確認したら、きっとびっくりするくらい真っ赤だろう。
堪らずに私は視線を落とした。

「は、はいっ」

こくりとうなずくと、声が震えた。

「俺も今日は"森名店長"ではなく、心から愛するひとりの女性として接するから」

甘い宣言に、心臓がどくんと強く鳴る。

心から愛する、という特別な響きが頭の中で反響した。

「……わかりました」
「じゃあ早速、伝えるけど。今日、すごく綺麗だ」

弾かれたように顔を上げると、目を細めて上品に微笑む清都さんの表情にドキッとする。

「ここに入って来たとき、見惚れたよ」

比喩ではなく本当に、顔から火が出そうだった。

両親と食事をするだけなのに、ここまで刺激的だなんて聞いてない。

一般的な恋人同士って、こんなに甘い言葉の応酬をするの?それとも清都さんだけ特別?

今まで抱いた経験のないこそばゆい感情がこみ上げて、胸が苦しくなってくる。

「……映美?」

無言で深くうつむく私を不審に思ったのか、清都さんが顔を覗き込んだ。

「私、そういった言葉をかけていただくことに慣れていないので……。どう反応していいかわからなくて、すみません」

正直に打ち明ける。
恥ずかしくて清都さんの顔をまともに見れないけれど、きっと困っているに違いない。
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