エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
偽とはいえ今日は恋人としてご両親に会うのに、いちいち盛大に赤面したり、照れて無言になったりで大丈夫かな。
さすがにご両親も挙動不審だと思うんじゃ……。

「あの、今更で申し訳ないのですが、こんな私で大丈夫でしょうか? 清都さんの恋人になれますか?」

消え入りそうな声で必死に聞いて、おずおずと顔を上げる。
すると、目を丸くした清都さんが次の瞬間破顔した。

「かわいい反応だな。大丈夫だよ、そのままで」

か、かわいい……?

私はきょとんと目を見開く。

「俺の目には、ただただかわいい恋人に映ってる」

さり気なくかわいいと二回も言われ、時間差で照れてきた。

「ほ、本当ですか?」
「ああ。他の男の目には映らないでほしいくらい、きみは素敵だよ」

気の抜けた声で聞いた私に、清都さんは優しい笑顔で答えた。

私にこれ以上不安を抱かせないために、こんな歯の浮くような台詞をすんなりと言えるなんて、さすがイケメン御曹司。
これまでに何人もの女性に言って、喜ばれてきたのだろう。

「ありがとうございます……」

私はなんだか複雑な気持ちでコーヒーを啜った。

食事会が開始する時刻が近づき、私たちはエレベーターで移動した。
存在感抜群の指輪を左手の薬指に嵌めると、サイズは少し大きかった。

落としたり傷つけたりしないよう、気をつけなくては。

『もちろんタダでとは言わない。この指輪は、食事会が終わればきみのものだ』

清都さんはああ言っていたけれど、食事会が終わったら返すつもりだ。
見返りがほしくて受け入れたのではなく、純粋に清都さんを助けたい。
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