エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
ご両親が設けてくれた食事場所のレストランは、海が一望できるとても素敵なロケーションだった。

「はじめまして、森名映美です」

自分の会社の社長である清都さんのお父様を前に、緊張で体が固くなる。

丁寧にお辞儀をして顔を上げると、和やかな表情のご両親が目に入った。

「清都の父です。いつも清都がお世話になってます」
「映美さん、はじめまして。今夜はご一緒するのをとても楽しみにしてました」

ロマンスグレーの白鳥社長は凛々しく精悍な顔つきで、大会社の社長を務めるだけの貫禄がある。
お母様はとても若くて背が高く、顔の輪郭や各パーツ、肌や髪の色も清都さんによく似ていた。

「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」

そんなふたりに気圧されつつも、私は震えそうになる両足にグッと力を入れた。

通された席は大きな窓の真横で、外にはライトアップされたベイブリッジの美しい夜景がきらめいている。
もしもこんな緊張感に包まれた状況じゃなかったら、もっとじっくりと堪能できただろう。

食前酒の後に料理が運ばれてきて、マナーに注意しながらいただいた。フォアグラを食べたのは初めてだった。

「映美さんは学生時代からプリズムで働いてくださってるんですってね」

お母様に問われ、私は姿勢を正す。

「はい、大学卒業後に正社員として採用していただきました。とてもよい職場環境で、大変やりがいがあります」

面接じゃないんだから……、と自分でも突っ込みたくなるくらい堅苦しく答える。
極度の緊張で顔が強張る私に対し、お母様はとてもおおらかに微笑んだ。

「そうですか。その頃から清都と付き合っていたのですか?」
「いえ、そ、その……」

こういう話をもっと掘り下げておくべきだった。
私は後悔しながら言いよどみ、ナイフとフォークを持つ手を震えさせる。

「付き合い始めたのは少し前だよ。俺はずっと片思いしてたけど」

すると、私の隣で余裕のある所作を披露する清都さんが、さりげなくフォローした。

「まあ、そうなのね」

お母様はフフッと優しく笑う。

オマール海老、黒毛和牛、黒アワビといった高級食材は美味しいのだろうけれど、今の私には無味だった。
料理を口に運ぶ動きすら、まるで年代物のロボットさながらぎこちない。
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