エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
「白鳥部長、今の言葉すごく素敵です! 私めちゃくちゃキュンとしました!」
合わせた両手を胸の前で握った千花ちゃんが、大げさに目をウルウルさせて甲高い声を出す。
私も同じ気持ちだった。
千花ちゃんに代弁されて、伝えるタイミングを逃したけれど……。
「ありがとうございます、白鳥部長」
恐縮し、小声で伝えた私を見て、白鳥部長はフッと睫毛を伏せて微笑んだ。
「今日はレジ締めが吉野で、森名店長は中番だな」
そして、パソコンを操作しながらつぶやいた。どうやらシフト表を確認しているらしい。
「森名店長、今夜予定は?」
「え?」
「もし都合がよければ八時に駅で待ち合わせをしたいんだけど。どう?」
私は目をしばたたかせ、再び「え?」と気の抜けた声を発する。
声だけではなく、たぶん顔まで間抜けだろう。
待ち合わせ、どう?って……。
ふたりきりで?
「よ、予定は、ありませんけど……」
「じゃあ、待ってる」
白鳥部長は困惑して答える私に片頬笑むと、腕時計に目を落として立ち上がった。
「熱心ですね、白鳥部長。仕事の後も打ち合わせですかね?」
遠ざかって行く後ろ姿を見つめ、千花ちゃんが言う。
私はようやくハッとして、曖昧に笑った。