エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
午後八時、プリズム近くの主要駅。
五分前に到着すると、先ほど店舗に来たときと同じスーツ姿の白鳥部長がすでに待っていた。

「遅くなってすみません!」
「いや、時間ぴったり」

到着早々、ガバッと頭を下げた私に、白鳥部長は柔和に微笑む。
職場以外で会うのは初めてなので、プライベートの極上笑顔に不覚にもときめいてしまう。

「それじゃあ行こうか。ゆっくり話したいから、落ち着いて飲める店に案内する」
「は、はい」

ゆっくり話したいということは、プライベートな時間を使って行う仕事の面談ってところだろうか。

いきなり待ち合わせを打診され、デート?だなんて胸がざわめいたのは秘密だ。
私と白鳥部長とじゃ、到底釣り合わない。

人混みを避けて歩く白鳥部長の半歩後ろをついて行く。
徒歩数分で到着したのは、駅前の喧噪から離れた路地裏にある、レンガ造りがお洒落な落ち着いた建物だった。

重厚感のあるドアを開けると、店内はウッド調のインテリアでまとめられた、かわいらしい雰囲気。

五席しかないテーブル席はすでに埋まっていたので、私たちはカウンター席に並んで座った。

ビールを注文し、白鳥部長と控えめにグラスを合わせる。

「お疲れ様。今日は突然時間をもらって申し訳ない」
「いえ、とんでもないです」

きめ細やかな泡と、すっきりした味わいが魅力のクリスタルビールを喉に流し込んだ。

「早速だけど森名店長、もう一度聞く」

ビールの美味しさに満足していた私は、白鳥部長の仕事モードの硬い声に姿勢を正した。 

「は、はい」
「今お付き合いされてる方はいないんだね?」

探るような表情の白鳥部長が、私の目に映る。

この質問も、面談のうちだろうか。
そう察した私は、グラスをコースターの上に置いた。

「はい、いませ」
「ごめん、困らせてるよな、俺。焦ってしまって」

頬を弛緩させ、白鳥部長はきょとんと静止した私を見る。

白鳥部長、どうしたんだろう……。
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