エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
「お詫びにこの店の惣菜、全部買うよ」
心臓があり得ないくらい強くバクバクして、ただ惰性で呼吸をしている私に、清都さんは平然と告げる。
「ぜ、全部⁉」
やっと喉から絞り出すと、甲高い声になった。
戸惑いを隠せない私を、清都さんは僅かに眉を下げてクスリと笑う。
「この店ごと我が社で買収してもいい」
「……はい⁉」
時間差で、素っ頓狂な声が出るのも無理もない。
厨房にいる店長とパートさんも、私の背後でざわつき始めた。
にわかには信じられないけれど、清都さんは神妙な顔つきだ。
今の彼ならやりかねないという圧を感じる。
「だからもう仕事を切り上げて、俺と話す時間をくれないか」
一歩踏み出し、清都さんはカウンターを隔てて私と間合いを詰める。
宝石のように澄んだ漆黒の瞳から、目を逸らせない。
どうして今更……?
話なんてないと思ったとき、光太の笑顔が頭に浮かんだ。
まさか、光太のことがバレた?
というか、どうして私がここで働いているとわかったのだろう。
疑問だらけで頭が混乱し、焦燥でたじろぐ私に、清都さんが探るような視線を寄越した。
「と、とにかく、お客様のご迷惑になるのでお引取りください。お願いします」
お昼どきが近づき、客足が増えてきた。
言ったそばから数名のお客様が入店し、惣菜が並ぶケースの前に次々と並ぶ。
清都さんは不服そうにため息をひとつ吐き、踵を返した。
店から出て行った姿を見て、私はホッと胸をなで下ろす。
「お騒がせしてすみませんでした」
すぐに厨房の方を振り返り、店長とパートさんに謝罪した。
顔を見合わせたふたりが苦笑する。私は気持ちを切り替えて、接客に集中した。
ここには亜紀さんがたまに買いに来てくれる。先日、清都さんが帰国して、副社長に就任したと聞いた。
ニ年に渡る海外勤務のせいか、清都さんは見た目が洗練され、以前よりも精悍な顔つきになり、態度も強引なものに変化していた。
『お詫びにこの店の惣菜、全部買うよ』
淡々とした物言いや所作には、気圧される迫力があった。二年間という空白は、こんなにも人を変えるんだ。
『彼女は大切な女性です。あなたは妥協で口説いているのかもしれないけど、俺は映美じゃなきゃダメなんだ』
さっきの清都さんの言葉が頭の中に響いて、胸が締めつけられる。
心臓があり得ないくらい強くバクバクして、ただ惰性で呼吸をしている私に、清都さんは平然と告げる。
「ぜ、全部⁉」
やっと喉から絞り出すと、甲高い声になった。
戸惑いを隠せない私を、清都さんは僅かに眉を下げてクスリと笑う。
「この店ごと我が社で買収してもいい」
「……はい⁉」
時間差で、素っ頓狂な声が出るのも無理もない。
厨房にいる店長とパートさんも、私の背後でざわつき始めた。
にわかには信じられないけれど、清都さんは神妙な顔つきだ。
今の彼ならやりかねないという圧を感じる。
「だからもう仕事を切り上げて、俺と話す時間をくれないか」
一歩踏み出し、清都さんはカウンターを隔てて私と間合いを詰める。
宝石のように澄んだ漆黒の瞳から、目を逸らせない。
どうして今更……?
話なんてないと思ったとき、光太の笑顔が頭に浮かんだ。
まさか、光太のことがバレた?
というか、どうして私がここで働いているとわかったのだろう。
疑問だらけで頭が混乱し、焦燥でたじろぐ私に、清都さんが探るような視線を寄越した。
「と、とにかく、お客様のご迷惑になるのでお引取りください。お願いします」
お昼どきが近づき、客足が増えてきた。
言ったそばから数名のお客様が入店し、惣菜が並ぶケースの前に次々と並ぶ。
清都さんは不服そうにため息をひとつ吐き、踵を返した。
店から出て行った姿を見て、私はホッと胸をなで下ろす。
「お騒がせしてすみませんでした」
すぐに厨房の方を振り返り、店長とパートさんに謝罪した。
顔を見合わせたふたりが苦笑する。私は気持ちを切り替えて、接客に集中した。
ここには亜紀さんがたまに買いに来てくれる。先日、清都さんが帰国して、副社長に就任したと聞いた。
ニ年に渡る海外勤務のせいか、清都さんは見た目が洗練され、以前よりも精悍な顔つきになり、態度も強引なものに変化していた。
『お詫びにこの店の惣菜、全部買うよ』
淡々とした物言いや所作には、気圧される迫力があった。二年間という空白は、こんなにも人を変えるんだ。
『彼女は大切な女性です。あなたは妥協で口説いているのかもしれないけど、俺は映美じゃなきゃダメなんだ』
さっきの清都さんの言葉が頭の中に響いて、胸が締めつけられる。