エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
「もちろんそのつもりだよ。映美が俺を避けずに、これからも会ってくれるのならね」
「そ、それはっ……」

そんなふうに脅すのは止めてほしい。
私を理由にして、清都さんは本当は亜紀さんに会いたいだけじゃないよね。

邪推なんかして、気が滅入った私は短く息を吐く。
そして、バッグの中から濃紺の箱を取り出すと、清都さんに差し出した。

「これ、お返しします」

二年前にご両親の前で偽恋人を演じた際、結婚の約束をしている証拠につけた大粒ダイヤの指輪だ。

「返しそびれてしまい、すみませんでした」

こんな高価なものを部屋にしまっておくのは落ち着かなかったから、今日返すタイミングがあって正直ホッとしている。

清都さんは目を見開き、少し間があってから指輪ケースを受け取った。

「ああ、そうだな。新しいものを用意しよう」

さも当然かのごとく発した清都さんの言葉に、私は首を傾げる。

「新しいもの?」
「あのときと今は状況が違う。もっとちゃんとしたものを贈らせてもらうよ」
「は⁉」

もっとちゃんとしたもの、って……。清都さんの思考が理解できない。

「そういうつもりでお返ししたんじゃないです。私、清都さんと結婚はできません」

はっきり伝えると、清都さんは片眉をピクリと動かした。
不穏な空気になりそうだけれど、私は怯まずに続ける。

「光太のことをすぐに知らせなかったのは悪かったと思ってます。だけど、責任なんて取ってもらわなくて結構ですから」

きっぱりと言い切ると、私は光太の笑顔を思い浮かべた。そうすると、自然とこちらも笑顔になってくる。

「真面目に仕事をして、ささやかでも笑顔があふれる毎日を送るのが私の目標なんです。光太にもなるべく不自由させませんので、どうかご安心ください」

私が話し終えると、指輪ケースをテーブルの上に置いた清都さんが静かに口を開いた。

「謝るのは俺の方だ。今までなにも知らなかったとはいえ、きみひとりに子育てを任せっきりにして申し訳なく思ってる。でもこれからは、俺にも関わらせてほしいんだ」

揺るぎなく真っ直ぐな清都さんの目が、私を捕らえて離さない。
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