エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
「いずれ必要になると思って、昨日のうちに取り急ぎ準備した」

運転席に座った清都さんは、事もなげに言ってシートベルトを締めた。

「そうですか……」

わざわざチャイルドシートを準備してくれるなんて驚いた。
素早い行動に感心すると同時に、光太と関わりたいと本心で望んでいるとわかった気がした。

保育園に着くと、先生に抱かれた光太はぐったりとしていた。
先生に挨拶し、光太を抱きかかえると驚くほど体が熱くて心配になる。

「光太、大丈夫だよ。お医者さんに見てもらおうね」

腕の中の光太に声をかけながら保育園の駐車場に戻ると、清都さんは車から降りて待っていた。

「かかりつけはどこの病院?」
「え? 駅前の小児科ですけど」

ここでさすがに仕事に戻ると思っていた私は、車には乗らずに深々と頭を下げる。

「これから先は大丈夫ですから、清都さんはお仕事に戻ってください」
「今秘書に電話をして事情を話した。今日は急ぎの仕事はないから、病院まで付き合わせてくれ」
「で、でも」
「ほら、外にいたら光太の体が冷えるぞ。早く乗って」

清都さんに促され、私は渋々車に乗り込んだ。

光太は虚ろな目で清都さんを見つめていたけれど、ぐずらずにおとなしくチャイルドシートに座った。
今日は体調が悪く、人見知りをする気力もないようだ。

清都さんはたびたびルームミラー越しに心配そうに眉を下げ、「大丈夫か? すぐに着くからがんばろうな」と、光太に優しく語りかけた。

小児科では、発熱の他に風邪症状がなく、まだ罹患していないため、月齢的にも突発性発疹かもしれないとの診断を受けた。
二、三日経って熱が下がってから発疹が見られるかもしれない。

解熱剤を処方され、病院を後にする。

「真っ直ぐ家に送っていいか? どこか寄る?」

診察が終わるまで車で待っていてくれた清都さんに尋ねられ、私はドラッグストアに立ち寄ってほしいとお願いした。

チャイルドシートで眠ってしまった光太を残し、経口補水液を購入するためだ。
あとはバナナ、ゼリーなど、食欲がなくなったときに少しでも食べられる光太の好物を購入した。

「すみません、遅くなって」

買い物を終えるとすぐさま車に戻る。
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