エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
「はい、お陰さまで。その節は本当にありがとうございました」
「礼なんていい。当然だと言っただろ?」
「でも……。仕事に穴を開けさせてしまったのが申し訳なくて」
赤信号で停車した。
窓の流れる風景が止まったので、光太は身を乗り出して不思議そうに外を見ている。
「あの日は本当に融通のきく職務内容だったし、なにより息子が急病となれば親として優先したくなるだろう?」
返す言葉が見つからなかった。
もちろんあの日の仕事内容的に、柔軟に動けたのはあるにしても、光太を第一に考えてくれている気がしてうれしかった。
初めて訪れる清都さんの自宅は、コンシェルジュが常駐する高層マンションの最上階。
今までは一番上なんて、どんな人が住んでいるんだろうと思って見ていたけれど、まさか自分が来るなんて信じられない気分だ。
エレベーターに乗り込むと、気圧の変化に戸惑ったのか光太は怪訝そうな顔をした。
けれども最奥にあるドアを開けて玄関に入り、広いたたきで靴を脱いですぐの一室に通された瞬間。光太の顔の曇りは一気に晴れた。
「どうかな。気に入ってくれるといいんだが」
清都さんが控えめな声で光太に尋ねる。
返事の代わりに彼は、瞳をキラキラ輝かせた。
「すごいですね。まるでキッズルームみたいです」
目の前にはボールプール、ジャングルジム付きの滑り台にブランコ、乗用玩具が数台。電車のおもちゃやミニカー、ブロックにキッチンセット。
ここまで揃った施設で一時間遊ばせるとなると、数百円じゃ済まないかもしれない。
最初は少し警戒し、私の顔をうかがいながら遊び始めた光太だったけれど、すぐにあるものすべてに夢中になった。
「これ、今日のためにご用意してくださったんですか?」
「ああ、小さい子どもがいる秘書に聞いたんだ。どんなおもちゃが人気かって」
「そうなんですか……。ありがとうございます」
清都さんの子煩悩な一面に、私は驚くとともに微笑ましい気持ちになった。
「うちの狭い実家では大型の遊具は置けないし、ここまでたくさんのおもちゃを揃えるのは難しいので。すごく贅沢です」
光太のためにここまでしてくれるなんて、清都さんは相当甘々なパパであることは間違いない。