エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない

「いや、それがＳＮＳの件ではないようなんだ。俺たちが別れたと話したら、"私が余計な話をしたせいかもしれない"と言って思い詰めた顔をしていたよ」

余計な話？
それってもしかして……。

『前にね、清都から私とは結婚できないって言われたときに理由を聞いたの。そしたら、同じ職場のとても素敵な女性にずっと前から恋してるんだって。その彼女に会えなくなる前にアプローチするって言ってたわ』

乃愛さんの言葉が、頭の中で蘇る。

「なんのことが見当がついているなら、教えてくれないか」

静止している私に、清都さんが尋ねた。

「え？　えっと……」

本人に直接話していいのかな……。

逡巡すると同時に、清都さんの本当の気持ちを知りたくなった。

不躾かもしれないけれど、亜紀さんを好きだったのか、今はどうなのか。聞くのが怖かった二年前から、私は気になって仕方がなかったんだ。

「……あのとき私、乃愛さんから、清都さんにはほかに好きな人がいると聞いたんです」
「は？」

気の抜けた声で言い、清都さんは目を大きく見開いた。

「それは、亜紀さんなのかなって」
「俺が亜紀さんを？」

私の言葉を遮るくらいの勢いで、清都さんは怪訝そうに言った。
美しい面差しが、徐々にしかめられていく。

「あの、だって清都さんは以前、亜紀さんは素敵な女性だと言っていたので……。だからあの夜、清都さんが失恋したばかりだと話していたのは、亜紀さんになんじゃないかと思って」

不穏な雰囲気が広がり、私は言い訳のようにまくし立てた。
すると今度は激しく困惑した表情で、清都さんが首を左右に振る。

「いやいやいや、あれは言葉の綾で」
「言葉の綾？　違うのですか？」
「ああ、誤解だよ」

きっぱりと否定され、私はぽかんと口を開けた。