エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
「映美は、俺が亜紀さんに恋をしていて、破れたからきみに偽の恋人を頼んだとでも思っていたのか?」

自分でスプーンですくってご飯を食べていた光太が、私たちの応酬を不思議そうに見ている。

「へ? ま、まあ……」

はあ、と盛大にため息を吐かれた私が肩を小さくさせ、萎縮したときだった。

「言っただろ? きみを抱きたい、って」

ぶつけられたストレートな言葉に、ドクンと胸を打たれた。
心臓が胸から立体的に飛び出したんじゃないか、なんて非現実的な心配までしてしまうくらい高鳴った。

「まったく心外だよ。あの夜、俺は真っ直ぐにきみだけを思っていた」

静かに言い終え、清都さんはお茶を飲み干した。

私は顔を見られないようにうつむく。
まさか自分が責められる結果になるとは思わなかった。

けれど、結ばれたのは誰かの代わりではなかったと知り、ひたすら顔が熱くなった。たぶん驚くほど真っ赤だと思う。

清都さんは恋愛慣れしていそうだから、別に好きでもない相手とも一夜を過ごせるのではないかと思っていたけれど、それは私の思い違いで。

私にそんな人だと思われたことが"心外"だったのだ、きっと。

「すみません、勘違いをして……」

頭を下げ、清都さんをちらりと見つめる。
私を一瞥した清都さんは、観念したようにフッと微笑んだ。

「誤解がとけたのならいいんだ。こうして光太にも出会えて、俺は幸運だよ」

やわらかい眼差しで光太と交互に見つめられ、胸がいっぱいになっていく。

私たちはお互いに思い合っていて、光太はとても愛されている。それだけで、ほかに望むものなどないと思えるほど、幸せを感じた。

三人が無言で食事をする時間がしばらく流れた後。

「光太、人参食べられたんだね。すごいね、カッコいいな!」

付け合せの人参をパクリと口に入れる光太を見て、私は明るい調子で褒めた。

パチパチと拍手をすると、光太もうれしそうに頬をほころばせて模倣する。
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