新そよ風に乗って 〜夢先案内人〜
難攻不落
怒濤の決算仮締めが明後日で終わると、あとは10日までに来る光熱費の請求を待って本締めをする。会計はこれからが忙しい。新生三カ年計画のスタートの年の最初の期でもあるが、そのスタートにあたり大幅な人事異動が行われ、四月一日付でかなりの異動がある。経理も人員を減らされ、営業や独立する子会社へ異動、転勤の辞令を受けた者も居る。昇級者もごく僅かな人数だったが、その中に自分が入っていたことに驚きと共に複雑な思いに駆られた。正直、社長に辞令を突き返そうかとさえ思ったが、道義付けをされて思い留まざるを得なかった。「社運を賭けて取り組む新生三カ年計画を、必ず実行、成果を上げるように。そのための役職だと思ってくれ」と。確かに功績などを認められたことは、嬉しく思う。しかしその反面、基本給も上がるわけだから人件費も上がるのだ。営業のように稼げる職場ではない経理に居て、ましてベースアップはゼロに等しい年にと考えれば考えるほど、この昇級は重くのし掛かっていた。
「高橋君。ちょっと会議室に来てくれないか。担当長会議をするから」
「はい」
三月上旬にすでに決まっていた新入社員の配属先人事だったが、新入社員の経理内の配置だけはまだ決まっていなかったようで、この時期に新入社員を採用すること自体、本来、考えられないのだが、去年のうちにすでに決まってしまっていたこと故に、取り消すことは出来ずにそのまま採用された。経理にも新たに大卒男子三人と、短大卒女子五人の新入社員が入って来るが、その社内で作成された経歴書と適性検査の結果のコピーが会議室に入ると手渡された。
「こんなに新入社員が採用されるのも、今年が最後かもしれないな。高橋君」
「高橋君。ちょっと会議室に来てくれないか。担当長会議をするから」
「はい」
三月上旬にすでに決まっていた新入社員の配属先人事だったが、新入社員の経理内の配置だけはまだ決まっていなかったようで、この時期に新入社員を採用すること自体、本来、考えられないのだが、去年のうちにすでに決まってしまっていたこと故に、取り消すことは出来ずにそのまま採用された。経理にも新たに大卒男子三人と、短大卒女子五人の新入社員が入って来るが、その社内で作成された経歴書と適性検査の結果のコピーが会議室に入ると手渡された。
「こんなに新入社員が採用されるのも、今年が最後かもしれないな。高橋君」