新そよ風に乗って 〜夢先案内人〜
彼女に今、どうこう言ったところで始まらないのだが、仕事というものは決して苦痛だけではなく、楽しいものだということを知って欲しい。彼女自身が達成感と充実感を味わい、仕事は楽しいものだということを実感するには、どうすれば……。
「ちょっと、貴女。コピー取るのに、いったい何時間かかってるの?」
ん?
パソコン画面から顔を上げた中原と視線が合った。恐らく、中原も彼女の動向を気にしていたのだろう。立ち上がって行こうとする中原を手で制し、ちょうどコピーをしようと思っていた書類を持ってコピー機の方へと向かう。こういう場合、彼女を庇って頭ごなしに言うことはどちらにとっても逆効果と言えよう。相手にとっても彼女にとっても、今後、何らかの形で遺恨が残ってしまう。彼女にとっては、相手に対しても苦手意識が生まれてしまう。
「すみません。1枚コピーしようと思っていたのですが、枚数が20枚設定になってしまっていて……それで……」
「どうしたの?」
「どうもこうもないわよ。コピー1枚取れない新人なんて、初めて見たわ。無駄に何枚もコピーして、貴女が幾ら無駄な人材だからって用紙まで無駄にしないでよ。ただでさえ、今、うちの会社は大変なんだから」
「本当よね」
「……」
パワーハラスメントまではいかないにしろ、女性特有のあれか……。
「どうかしましたか?」
「高橋さん。おたくの新人、何とかして下さい。コピー1枚取れないで、こっちは時間のロスばかりですよ」
彼女を見ると、今にも泣き出しそうだ。
「そうでしたか。私も新人の頃は右も左もわからなくて、こんな感じでした。ですが、その時、丁寧に教えて下さった黒沢さん達の優しさを今でも覚えていますよ。申し訳ありませんが、矢島さんにもまた教えて頂けませんか? とても助かるのですが」
「高橋さん……」
「でも毎回、毎回は無理ですよ。それでなくても、人員減らされて大変なんですから。だから新人は要らなかったのに、中堅の慣れた人を出してまでこんな無駄な人材を入れ……」
「無駄な人材かどうかは、貴女が判断することではありません。我が社に無駄な人材など、一人も存在しないと思っています。私が上司である以上、矢島さんも一日も早く即戦力となって会社のために尽力を注いでくれると信じていますので、そういった言動は慎んで頂きたい」
「ちょっと、貴女。コピー取るのに、いったい何時間かかってるの?」
ん?
パソコン画面から顔を上げた中原と視線が合った。恐らく、中原も彼女の動向を気にしていたのだろう。立ち上がって行こうとする中原を手で制し、ちょうどコピーをしようと思っていた書類を持ってコピー機の方へと向かう。こういう場合、彼女を庇って頭ごなしに言うことはどちらにとっても逆効果と言えよう。相手にとっても彼女にとっても、今後、何らかの形で遺恨が残ってしまう。彼女にとっては、相手に対しても苦手意識が生まれてしまう。
「すみません。1枚コピーしようと思っていたのですが、枚数が20枚設定になってしまっていて……それで……」
「どうしたの?」
「どうもこうもないわよ。コピー1枚取れない新人なんて、初めて見たわ。無駄に何枚もコピーして、貴女が幾ら無駄な人材だからって用紙まで無駄にしないでよ。ただでさえ、今、うちの会社は大変なんだから」
「本当よね」
「……」
パワーハラスメントまではいかないにしろ、女性特有のあれか……。
「どうかしましたか?」
「高橋さん。おたくの新人、何とかして下さい。コピー1枚取れないで、こっちは時間のロスばかりですよ」
彼女を見ると、今にも泣き出しそうだ。
「そうでしたか。私も新人の頃は右も左もわからなくて、こんな感じでした。ですが、その時、丁寧に教えて下さった黒沢さん達の優しさを今でも覚えていますよ。申し訳ありませんが、矢島さんにもまた教えて頂けませんか? とても助かるのですが」
「高橋さん……」
「でも毎回、毎回は無理ですよ。それでなくても、人員減らされて大変なんですから。だから新人は要らなかったのに、中堅の慣れた人を出してまでこんな無駄な人材を入れ……」
「無駄な人材かどうかは、貴女が判断することではありません。我が社に無駄な人材など、一人も存在しないと思っています。私が上司である以上、矢島さんも一日も早く即戦力となって会社のために尽力を注いでくれると信じていますので、そういった言動は慎んで頂きたい」