新そよ風に乗って 〜夢先案内人〜

合格率平均7.7%。過去の合格率と比べても……どんぐりの背比べか。
教授……。
「どうせ惰性で生きる人生を選択しようとしているのならばここはひとつ、そのグローバルな物の見方や考え方の出来る君のその若さと才能を持ってすれば可能であろう将来の選択の夢前案内人を、他人に任せてみてはどうだろう」
夢先案内人、ちょっと俺を買い被り過ぎなんじゃないだろうか。
しかし、公認会計士という言葉と資格があるということは知ってはいたが、まさかこんなに奥の深い仕事内容で、しかも試験科目の範囲も半端じゃないほど広い。税理士と違って一発勝負だし。受験資格に制限はないが、それなりに勉強しなければ受からない。簿記も一級は持っていなければ話にならないだろうし。
まずは会計士補(注:1)を取って、その後、実務経験も必要……。ということは、社会人になる前に何処か経理の仕事が出来るところでバイトをして経験年数を少しでも稼いでおいた方がいいのか……。
経理の仕事だけでなく、企業のコンサルティング業務やグローバル的に見てMBA(経営学修士)まで幅広く取得出来れば世界は更に広がる。一つの仕事だけに留まらない可能性を秘めた職種でもあり、独立性を持っているという言葉にも惹かれる。
きっと惰性で決めかねなかった将来の進路。どうせ惰性で生きる人生ならば、たとえ惰性でも生き抜いてみせる人生を。そこまで言われた以上、惰性でも生き抜いてみせたい。
ハハッ……。
教授は俺の性格をよく知り尽くしているな。まんまと俺は夢先案内人の道標に導かれている。しかし、もっと公認会計士の仕事内容のことなど、ありとあらゆる角度から知りたくなっているのも事実だった。
それから俺の人生の布石とも言える二日間を、すべて公認会計士になるためのリサーチで終わったが、ひとつだけ引っ掛かっていることがあった。

(注:1)公認会計士試験は2008年より試験制度が改正され、今はこの限りではありません。
< 18 / 181 >

この作品をシェア

pagetop