新そよ風に乗って 〜夢先案内人〜
「……」
仁さんは、久しぶりに会ったはずなのに、私の心の内を一発で当ててみせた。
「泉ちゃんさ。貴博は泉ちゃんが思っているとおりの男だと思うよ」
「仁さん……。それじゃ、やっぱり今日貴博さんがここにいらしたのは、ミサさんに会うためにですか?」
ハッ!
言ってから悔やんでも、もう遅かった。仁さんの誘導尋問に、まるで引っ掛かったみたいに胸のうちをさらけ出していた。
「えっ?そうなの?この仕事を誘ったのは俺だけど、多分行かないだろうと思ってた貴博が二つ返事だったのは確かだよ。でもミサさんに会うためだったかどうかは、俺も知らない」「そうだったんですか。さっきスタッフの人が、話してるのを聞いちゃったんですよ。ミサさんが貴博さんを指名したって」
「……」
「それで、貴博さんは今日来たと……。仁さんは、本当にご存じないんですか?」
「先方から、指名があったのは確かだよ」
やっぱり……。やはりミサさんが、貴博さんを指名して、それで今日……。
「でもミサさんから指名があったことを、貴博が知っていたかどうかは俺にもわからない。でも……」
そう言い掛けた仁さんはそのまま黙ってしまい、その後腕組みをして私をジッと見た。
「泉ちゃん。でもこれだけは言えるよ。貴博がどうとかいう以前に、人を好きになるのも嫌いになるのも自分次第。相手に心を開いて貰いたければ、まず自分から心を開かない限りは先には進めないし、相手も自分と同じように心は開いてはくれないのが人間の聖なる部分だと俺は思ってる。その人と関わりたいと思った時、その人が歩んできた道を辿る事は、他人の自分にはその権利もなければ意味もない。何故なら、その人の今を必要としているのであって、その人の過去を必要としているわけではないのだから」
仁さん。
「でも人ってさ。見たくないもの、知りたくない事を敢えて好奇心と怖いもの見たさで覗いてみたい探求心っていう厄介なものも持ち合わせていたりもするから、見てしまってから、知ってしまってから後悔したりもするんだよね。でもそんな紆余曲折を繰り返しながら、立ち振る舞いも上手くなって大人になっていく。いいような、悪いような……。だから泉ちゃん。貴博の過去に、あまり惑わされない方がいいと思うよ」
「仁さん。ありがとうございます」
「ハハッ……。わかったように偉そうな事言ってる俺だけど、過去の柵から抜け出せなかったりもしてるんだけどさ」
「仁さん?」
「泉ちゃんは、マネージャーさんと帰るんだよね?
「あっ、はい」