きみの背中を追いかけて
旅立ちの日に
美術室の窓から見える満開の桜。
僕は、その景色を眺めながら思い出に浸っていた。
美術部に入って丸2年。
この学校でこの部室で数え切れないくらい、いろんなことがあった。
部活に入るきっかけになった出来事を昨日のことのように思い出すし、なんだか時の流れが早く感じる。
ーーガラッ。
突然、扉が開いて振り返った。
入ってきたのは、証書ファイルを手に抱えた莉緒(りお)先輩。
学年でいうと、僕の1つ上。
「翔(かける)くん、来てたんだ」
「先輩こそどうしたんですか? さっき、卒業式終えたばかりなのに」
「なんかここって色々と思い出詰まってるから、最後に見ておきたいなって思って」
先輩は、僕の隣に来るなり、桜を見つめた。
開けている窓から、先輩の長くてさらさらの髪が風になびく。
スタイル抜群で、モデルでもおかしくないぐらいの超絶美人。
誰にでも笑顔で優しく接する先輩で、みんなからも愛される学校1のマドンナ的な存在。
そんな先輩と、対照的な僕が出会ったのは、単なる偶然だった。
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