きみの背中を追いかけて

それは、僕が高校入学したての頃。

クラスに馴染めず、1人ぽつりとノートの隅にイラストを描いていた。

いわゆる、落書きっていうやつ。

昔から、アニメキャラや人物を描くのが好きだった。

小さい頃、描いた絵を両親がとても褒めてくれたのが嬉しくて何度も描いては見せていた。

……でも、いつからだろう。

中学から高校に上がるにつれて、両親は僕の絵なんて見向きもしなくなった。

『絵なんか描いてないでちゃんと勉強しなさい!』って何度も叱られた。

これでも一応勉強してるのに……。

怒られたことがあまりにもショックで、もう絵なんて誰にも見せないと心に決めた。

そんな時、廊下の曲がり角でたまたま人とぶつかってしまった。

「「わっ!」」

衝撃でお互いに手に持っていた物が辺りに散乱してしまう。

「す、すみません!」

咄嗟に頭を下げて謝る僕に、ぶつかってしまった相手は優しい言葉をかけてくれた。

「こちらこそ、ごめんなさい。ケガとか大丈夫でしたか?」

顔をあげると、目の前には心配そうに僕を見る先輩がいた。

澄んだ綺麗な瞳に、お手入れがされてるサラサラで艶々な黒い髪。

容姿も美しく清潔感が溢れる先輩に思わず見惚れてしまい、ワンテンポ反応が遅れた。

「あ、はい。本当にすみません、大事なプリントをバラバラにしてしまって」

「全然いいよ。気にしないで」

しゃがんで辺りに散乱したものを一緒に拾い集める。
< 2 / 6 >

この作品をシェア

pagetop