きみの背中を追いかけて
莉緒先輩の紹介で、僕は美術部に所属した。
当時、部員には3年生が2人いたがどちらとも部活を掛け持ちしていて吹奏楽部にいることがほとんどだった。
長い間、放課後には莉緒先輩と2人だけの時間を過ごした。
先輩は、僕の絵に真っ直ぐ向き合ってくれた。
絵を描くたびに莉緒先輩は褒めてくれて、時にアドバイスをもらったりした。
僕は、人物を描くのが得意とする一方で、莉緒先輩は風景画がとても得意だった。
色使いが華やかで見る人を惹きつける。
コンクールに出せば優秀を飾るほど。
とても才能がある人だと周りの人たちは言うが、僕は莉緒先輩が裏でたくさん努力をしてることを知っている。
好きなことをしているとほとんどの人が1度は陥ってしまうスランプ。
でも、莉緒先輩は描いて描いて描きまくっていた。
白いキャンパスに、色が付いた筆を滑らせる。
長くて艶のある黒髪を耳にかける仕草は、絵になるなんて思ったりした。
風景画を描く莉緒先輩の横顔すら、とても美しかった。
でも、今日で莉緒先輩と会えるのは最後になってしまう。