きみの背中を追いかけて

「……あの、莉緒先輩」

「うん?」

「僕、莉緒先輩のことが好きです」

莉緒先輩の目を真っ直ぐ見て想いを伝えた。

告白したのは、今回が始めてじゃない。

過去に、何回か莉緒先輩にデッサンのモデルを頼んだことがあった。

恥ずかしいなんて言いながらも、ポーズをとってくれて、終いには完成したらその絵を欲しいと言ってくれた。

その時、莉緒先輩に告白したことがあった。

でも……。

「あははっ! ちょっと、私をからかうのやめてよ」

莉緒先輩は笑って、僕の告白をいつもかわしてしまう。

「からかってなんかいません! 本気なんです!」

どんなに必死に想いを伝えてみても……。

「私たちは、ただの先輩と後輩の関係でしょ?」

僕の気持ちなんて先輩には全然届かない。

絵に対しては真っ直ぐ見てくれるのに。

先輩と後輩の関係が、僕にとっては邪魔でしかない。

「あっ、でも、今日でその関係終わっちゃうね。寂しくなるなぁ……」

莉緒先輩はぽつりと言葉を漏らした。

今日で、莉緒先輩と離れ離れになってしまう。

実感はまだあまり湧かないけど、明日になったらここには先輩の姿はもうないんだ。

先輩は、美術部を引退した後もよく美術室に顔を出してくれて絵を描いてはお互い見せ合っていた。

でも、それすらもできなくなってしまう。

あともう1年早く生まれていたならば莉緒先輩と一緒に卒業できたのに。

莉緒先輩は待ってくれない。

いつも僕の先を行く。
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