きみの背中を追いかけて
「莉緒先輩って、本当に東京に行っちゃうんですか?」
不安な気持ちにかけられている僕とは違い、先輩は晴れやかだった。
「うん、行くよ。東京の大学に行くんだ。もっと美術の勉強したいから」
それが、莉緒先輩がたくさん考えて導き出した進路。
ならば、僕は応援するしかない。
なのに、未だ応援の言葉をかけることができずにいる。
「翔くんは、高校卒業したらこの町で働くの?」
「そのつもりだったんですけど、上京しようかなと思っています」
「どうして?」
これが今の僕にできる最後の告白。
「1年かかってしまいますが、絶対に奈緒先輩に会いに来ます! だから、その時は、僕を男として見てもらえますか?」
その言葉に目を見開く莉緒先輩。
でも、すぐに笑みを浮かべた。
「待ってるから」
その言葉に、今度は僕が目を見開いた。
「ほら、早く帰るよ」
照れ隠しに笑って歩き出す莉緒先輩。
「莉緒先輩、待ってくださーい!」
僕は、何度だってきみの背中を追いかける。
END