恋文の隠し場所 〜その想いを読み解いて〜
 先週と同じく、駅前のカフェで昼食を取ってから、先生の家に上がらせてもらった。

 「どうぞ」と促されたのはリビングだったが、奥の和室が目に入る。
 あの日、私がすっ転んだビニールシートはすっかり片付けられていて、緑のい草が顔を出していた。

 どうやら思ったよりもじっと見ていたらしい。先生は「先日は大変失礼いたしました」と苦笑いを浮かべる。
 私は「いえ、こちらこそ」と、慌てて促されたソファに座った。

 先生はテキストのように恋文をテーブルに置くと、私にも見えるようにすっとその位置をずらした。

「先週はこの辺りを読みましたよね。お恥ずかしながら、この彼の名は私には解読できませんでした。きっと珍しい名の男だったのでしょう」

 少し残念な気持ちになるけれど、先生でも読めないものは私に読めるわけがない。
 気持ちを切り替え、先生の辿る指の先に、何が書いてあるのかとわくわくした。
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