恋文の隠し場所 〜その想いを読み解いて〜
家を飛び出し、勢いで先生のマンションのエントランスまで来たのは良かった。
けれど、いざ来てみると、緊張してそれ以上どうして良いか分からなくなる。
午後2時半。約束の時間まで、まだあと30分もある。
時間まで、近くのお店で時間を潰すべきか。
けれど、早く知りたい。
早く、確かめたい。
先生の気持ちを。
先生がこの手紙を、私にしたためた意図を。
けれど、もしこれが冗談だったり、本当はただの江戸時代の少女の恋文の現代語訳にすぎなかったらどうしよう。
勘違いも甚だしい、ただのヤバい女だ。
あーでもない、こーでもない、とぐるぐると考えながら、エントランスのインターフォンの前に立ち尽くしていた。
――ああ、そうだ! 行く前に連絡入れればいいじゃん!
ふと気づき、一度インターフォンの前から退散する。
エントランスの端により、スマホを開く。連絡先一覧を見て、絶句した。
――私、先生の連絡先知らない……。
教室の連絡先はもらった広告に書いてあったはずだが、一度も連絡を入れたことがないのでスマホに履歴も残っていない。
――ああ、もう……。
頭を垂れ、よどんだ空気をまとう。
マンションの住人が出てきたらしい。エントランスの自動ガラス戸が開いた音がして、はっと背筋を正した。
「……宍戸、さん?」
驚いて、顔を上げる。
「やっぱり、宍戸さんでした」
柔らかく微笑む先生が、そこに立っていた。
「先生、……?」
目を丸くして先生を見上げれば、眼鏡の奥でその目が優しく細められる。
「すみません。待ちきれなくて、外まで来てしまいました」
――先生は、やっぱり私を……?
マンションのエントランスにも関わらず、先生の顔を想わず見つめてしまう。
先生の手は私の頬に伸ばされ、そっと触れる。
「これは……夢?」
「夢……だったら、私は困ります」
先生が笑った。けれど、私の瞳からは涙が溢れた。
「とにかく、部屋へどうぞ。待ち合わせも、あの和室でしたから」
先生が私の頬に触れた手を滑らせて、そのまま手を取る。
私は反対の袖口で涙を拭いながら、先生にエレベーターへと誘われた。
けれど、いざ来てみると、緊張してそれ以上どうして良いか分からなくなる。
午後2時半。約束の時間まで、まだあと30分もある。
時間まで、近くのお店で時間を潰すべきか。
けれど、早く知りたい。
早く、確かめたい。
先生の気持ちを。
先生がこの手紙を、私にしたためた意図を。
けれど、もしこれが冗談だったり、本当はただの江戸時代の少女の恋文の現代語訳にすぎなかったらどうしよう。
勘違いも甚だしい、ただのヤバい女だ。
あーでもない、こーでもない、とぐるぐると考えながら、エントランスのインターフォンの前に立ち尽くしていた。
――ああ、そうだ! 行く前に連絡入れればいいじゃん!
ふと気づき、一度インターフォンの前から退散する。
エントランスの端により、スマホを開く。連絡先一覧を見て、絶句した。
――私、先生の連絡先知らない……。
教室の連絡先はもらった広告に書いてあったはずだが、一度も連絡を入れたことがないのでスマホに履歴も残っていない。
――ああ、もう……。
頭を垂れ、よどんだ空気をまとう。
マンションの住人が出てきたらしい。エントランスの自動ガラス戸が開いた音がして、はっと背筋を正した。
「……宍戸、さん?」
驚いて、顔を上げる。
「やっぱり、宍戸さんでした」
柔らかく微笑む先生が、そこに立っていた。
「先生、……?」
目を丸くして先生を見上げれば、眼鏡の奥でその目が優しく細められる。
「すみません。待ちきれなくて、外まで来てしまいました」
――先生は、やっぱり私を……?
マンションのエントランスにも関わらず、先生の顔を想わず見つめてしまう。
先生の手は私の頬に伸ばされ、そっと触れる。
「これは……夢?」
「夢……だったら、私は困ります」
先生が笑った。けれど、私の瞳からは涙が溢れた。
「とにかく、部屋へどうぞ。待ち合わせも、あの和室でしたから」
先生が私の頬に触れた手を滑らせて、そのまま手を取る。
私は反対の袖口で涙を拭いながら、先生にエレベーターへと誘われた。