『Billion Love』~17回目のプロポーズは断ることが出来ない?!
隣りにいても雲の上の人
(十年前、高校二年)
「凜、俺のいない間に浮気すんなよ?」
「彼氏じゃないんだから、いちいち指図しないで」
自宅がバイク専門店の真宮 翔は、元プロモトクロスライダーの父の影響で五歳からモトクロスを始めた。
天性の運動神経は親譲りで、小学生の頃から賞レースに出場し、数々の大会で優勝を総なめにしている。
その存在は、日本のモトクロスライダーの中でも抜きん出た存在で、別格の強さを誇る。
十六歳で国際A級ライセンスを取得し、活動の場を日本から世界へと移そうとしている。
すらりとした細身の体に鍛え上げられた肉体美。
無駄な贅肉は削ぎ落され、日々の鍛錬が窺える。
くりっとしたアーモンド形の目、仰月型の薄い唇、落ち着いた低めの声は、モテ男の代表と言っても過言ではない。
その甘いルックスからファンクラブが出来るほどの人気で、知名度の低いオフロードバイク用の雑誌で表紙を飾れば即完売するほどの異例で、今スポーツ界では注目株のプロアスリートだ。
スポーツ特待で入学した翔と同じ高校に通う東野 凜は、至って普通の女子高校生。
翔の母親は、翔が三歳の時に病気で亡くなっている。
それ以来、父子家庭で育ったため、少々言葉使いが乱暴であるが、根は優しいのを凜は知っている。
一方、凜の家庭は父親がギャンブルと酒に溺れ、凜が六歳の時に離婚し、母子家庭である。
母親が営む食堂は小さいながらも美味しいと評判で、母親がいない翔は凜の母親の手料理で育ったようなものだ。
家が近所ということもあり、家族のような付き合いをして来た。
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