『Billion Love』~17回目のプロポーズは断ることが出来ない?!

冗談でしているとは思えない。
凛ママの目が辛そうに見え、隣に座る父親の顔が、切なく苦しんでるように見える。

「この鍵はね、ドレッサーの鍵で、開けると中に指輪とかネックレスとか結構高価なものが入ってるのね?」
「……ん」
「後は………、これが車の鍵でこれが車検証。普段は車内に入れてあるからね?で、これらを処分する時に必要なのが、これ。私のと店の実印。と、一応これくらいだと思うけど、他にあったら一緒に金庫に入れておくから」

一通り話し終えた凜ママは、フゥ~と溜息を溢した。

「いきなり呼び出した上にこんなことして本当に申し訳ないんだけど、翔くんにしか頼めないと思って」
「………ん」
「私ね、膵臓がんの末期なの。余命宣告もされてて、あと三か月くらいらしくて」
「えっ……」
「手術も出来ないらしいし、抗がん剤治療始めると、こんな風にゆっくり話す機会がなくなりそうだから」
「………」
「凜のこと、お願い出来るかしら?それだけが心残りで。父親がいないのに、私までいなくなったらあの子、一人ぼっちになっちゃうでしょ?寂しい想いはこれまでも十分すぎるくらいさせて来たのに、こんな風になってしまって、あの子には……」

凛ママの目から涙がポロポロと溢れ出す。
隣りに座る父親も声を殺して泣いていた。
衝撃的な事実を突きつけられ、放心状態の俺は、状況を呑み込むのがやっとで。

数分の沈黙の後、それを破るかのように口を開いた。

「凜は病気のこと、知ってるの?」
「体調が思わしくないのは知ってるけど、膵臓がんだとは話してない。だから、残された時間ってのもね」

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