『Billion Love』~17回目のプロポーズは断ることが出来ない?!
ラスト プロポーズ
(一年後の十二月三十日、凜26歳の誕生日)
「翔~っ、換気扇掃除するの手伝ってぇ~~ッ!」
年末年始休暇中の食堂のキッチンを大掃除中の凛は、業務用の換気扇を取り外そうと必死になっている。
「きゃっ」
「あっぶねぇなぁッ!」
高い位置にある換気扇のカバーを取り外そうとした際に、ミニ脚立の上で体勢を崩した凜を間一髪で支えた翔。
「体重何㎏?」
「……言えるわけないでしょ」
「軽すぎんだろ」
「え?」
「もっとちゃんと食え」
「軽いの?重たいんじゃなくて?」
「重いわけねぇだろ、100㎏超えてるバイク操るんだから」
「おんぶして貰うのも重くて申し訳ないと思ってたのに…」
「バカか」
「えっ?!なっ…」
背中と腰を支えていた翔は、軽々と凜を抱き上げた。
「何、照れてんの?」
「っ……、だって、生まれて初めてのお姫様抱っこなんだもんっ」
「して欲しいならいつでもしてやるよ、これくらい」
「っ…」
筋肉粒々の腕にすっぽりと収まる凜の頬は、みるみるうちに桜色に染まった。
***
十八時過ぎ、翔の父親も合流し、凜の家で凜の誕生日会が開かれた。
翔パパからのプレゼントは、最新の美顔器。
欲しい欲しいと思ってもついつい後回しにしてしまう凜の性格をみかねて、プレゼントしたようだ。
「翔パパっ、ありがとぉぉ~っ!」
「ど~いたしまして~」
「親父っ、凜から離れろッ!」
嬉しさのあまり、翔パパに抱きついた凜を剥がそうと必死の翔。
翔の父親は飾られている敬子の写真を見つめ、目元を緩ませる。
『敬子さん、凜ちゃんが26歳になりましたよ』と。