『Billion Love』~17回目のプロポーズは断ることが出来ない?!
(MXGPシリーズ第十四戦、フィンランドにて)
「翔、大丈夫かなぁ?」
「昨日吐いたって聞いてるし、ちょっと心配だよな」
自身を追い込み過ぎて熱中症で倒れたとスタッフから連絡があった。
現在合計ポイントで二位につけてるから、これを欠場しても残りのレースでリカバリー出来そうだけど、多分翔のことだから出場するはず。
例え順位が二十位くらいだとしても、一ポイントでも稼げるなら彼は絶対に欠場しない。
だからこそ、体が心配になる。
上位の選手のポイントが結構僅差ということもあって、誰しも無理してでも出場すると思うから。
リビングテーブルに母親の写真と、翔の母親の写真も置いて、翔パパと二人で正座して祈り続ける。
どうか、神様。怪我だけはしないように見守って下さい。
***
(MXGPシリーズ第十八戦、ベトナムにて)
開幕から十七戦まで、フル出場の翔。
このベトナム戦を入れても残り三試合。
ここで順位を大きく落とすと浮上するのも厳しくなる。
縋る思いで祈りを込める。
せめて十位以内に入りますようにと。
ベトナムの暑い湿度と温度に打ち勝たないと勝機は見えてこない。
ほんの一瞬の隙が、残りの二戦に響くはず。
***
「何位だったの?十位以内に入れた?」
「二位か三位か、今審議してるみたい」
「え?」
一度電話を切った翔パパの電話に着信音が鳴った。
「二位?二位なんですか?ありがとうございますっ!」
(凜ちゃん、二位だって!)
スタッフと電話で話す翔パパが口元で教えてくれた。
『翔、よく頑張ったね』