『Billion Love』~17回目のプロポーズは断ることが出来ない?!
「凜、腹減ったぁ~」
「オムライス作ってあるよ」
「おっ、やったね~」
上半身裸でハーフパンツ姿の翔が髪をタオルで拭きながらダイニングに現れた。
「Tシャツあったでしょ?」
「暑くて着らんねぇ」
鍛え上げられた肉体美はいつ見ても目の保養なんだけど、今日ばかりは見ると切なくなる。
こんな風に翔を近くで感じられるのも今日が最後?だから……。
暫く会えなくなることへの不安が一気に押し寄せて来る。
「薬塗ったげる」
「おぅ」
翔は傷が化膿し易い体質で、一度膿んでしまうと治り辛い。
だから、小さな傷でもアスリートにとっては致命的で、医師から処方されている軟膏を塗布する。
「荷物にちゃんと薬入れた?」
「入れたよ」
「飲み薬も?」
「ん」
母親がいない翔にとって、私と私の母親はいつも我が子みたいに翔の面倒をみて来た。
これも、明日からなくなるのね。
手当てを済ませ、薬を片付ける。
翔はダイニングに用意してあるオムライスを食べ始めた。
そんな彼の前に座り、じーっと見つめる。
「いい男だろ」
「………ん」
「宿題みてやろうか?」
「ホント?」
「ん」
「じゃあ、先に上がってるね!」
「フッ、現金なやつ」
特大オムライスを頬張る翔をその場に残し、自室へと駆け上がる。
苦手な数学をここぞとばかりに頼むために!
午前中から取り掛かっていたけど、チンプンカンプンで。
分からない問題は後で友達に聞こうかと思って飛ばしていた。
その部分にポストイットを貼っていると、麦茶の入ったグラスを二つ持って現れた。