『Billion Love』~17回目のプロポーズは断ることが出来ない?!
「涼しいぃぃぃ~~」
午前中から部屋に籠って宿題をしていたお陰で部屋は結構冷えていて、さすがの翔もTシャツを着た。
「これが貼ってあるとこ、全部お願い」
「多すぎんだろっ」
「いいじゃん、これくらい」
教科書見たって全然分からなかったんだもん。
翔は問題の横の余白部分に公式やら、教科書の何ページを参考にすべきかとか。
それでも分からない所は、ルーズリーフに細かく解き方を書いてくれる。
本当に、この頭のどこに入ってるんだろう?
「顔近い」
「あ、ごめん」
「しっかり洗ったつもりだけど、臭うか?」
「あ、違うっ、ごめん。この頭のどこに数学の問題を解くメカニズムが入ってんのかなぁ?って思って」
「お前、バカか」
「ん、相当なおバカです。特に数学は」
少し短めのサラサラヘアーの頭をポンポンと叩くと、『やめろ』と手を払われた。
翔がモテる理由の一つに、この髪の毛も。
競技中はもちろんヘルメットを被っていて誰だか分からないくらいなんだけど、ヘルメットを取る時に、汗ばんだ髪を掻き上げる彼がカッコ良くて、世の女性のハートを鷲掴みにしている。
この髪も、私にとっては思い出の一ページなんだ。
無意識に髪に手が伸びていた。
真剣に問題を解いてる彼の隣に座って、サラサラの髪を指先で触れる。
「ゴミでもついてんの?」
「いや、いつ見てもサラサラだなぁと思って」
「柔らかすぎてワックスで固まらねぇし、短髪にしてもツンツンにならねぇから、坊主にしようかいつも考えてる」
「えっ」
「坊主とこれなら、こっちの方が好きか?」
「うん」
「じゃあ、このままにする」
「ん、そうして」
翔に坊主は似合わない。