空に一番近い彼
★★★

『待ってろ、すぐに行く』

俺はそれだけ送信すると、取るものもとりあえず車を飛ばした。
彼女が俺を呼んでいる。それだけで嬉しかった。今すぐ会いたい。彼女の傍にいたい。今まで味わったことのない感情がとめどなく溢れてくる。ハンドルを握る手にも力が入った。

別荘の駐車場に投げやるように車を止め、インターホンを押した。聞こえないのはわかっているのだけれど、激しくドアを叩いた。

ゆっくりと玄関ドアが開く。
彼女の姿が目の前に現れた瞬間、抑えられない感情が、抱きしめるという行動となって出てしまった。

彼女の腕が俺の背中に回された。
抱きしめる腕に力が入る。

「駿さん」

俺の耳に柔らかく心地よい声が届いた。
俺は彼女の顔を両手で包む。

「駿さん、会いたかった」

それは彼女の口から流れ出た、初めて聴いた彼女自身の声。今まで耳にしてきた誰の声よりも美しく、俺の心の奥底まで響き渡る。

「美咲」

潤んだ瞳が俺見つめている。

「駿さん」

俺の名を呼ぶ唇が俺の感情を爆発させた。
気がついた時には彼女の唇を奪っていた。
愛しくて愛しくて、俺はどうにかなってしまいそうだ。
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