空に一番近い彼
◇◇◇

「駿さん」

思わず声にしていた。
耳が聞こえなくなった時、声も封印した。
二度と声を発することはないと思っていたのに、自分の意思を無視して彼の名を呼んでいた。

私は彼に恋をしている。今はっきりとわかった。彼の口づけが心地よい。私を優しく包み込むような優しい口づけ。

恥ずかしいけれど、私のファーストキス。長い長いファーストキスだった。

唇が離れ、彼が私を見つめている。

《すきだ みさき》

彼の唇がゆっくりと動く。

彼の声を聴きたい。どんな声をしているのだろう。低音ボイスかな、ハスキーボイスかな、勝手に想像する。優しい声なのは間違いないだろう。

彼の大きくて骨ばった手が私の髪を優しく撫でる。
二人で見つめ合い微笑んだ。

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