空に一番近い彼
★★★

彼女の戸惑った表情を見て、余計なことを言ってしまったと後悔した。
欲求を満たすために無理強いをしてしまい、彼女に嫌な思いをさせてしまった自分に腹が立った。

考えてみれは、言葉を発することができる彼女が、わざわざ文字でやり取りをすること自体、声を発すると言う行為に抵抗があるということではないか。

もしかしたら、心を閉ざしてしまうかもしれない。

ごめん

それしか言えなかった。

落ち込む俺の手に彼女の手が重なった。
彼女が離れて行かないように、俺は強く握りしめた。

手を繋いだまま二人で星を見ていると、流れ星が立て続けに目の前を通り過ぎていった。

《見た?》

彼女は頷いた。

「駿さん、声が聴きたい。駿さんの声が聴きたい」

囁くように発した彼女の声が、俺の胸を熱くする。俺はそのまま抱きしめた。俺の腕の中で微かに震える彼女の髪を撫でながら、しばらく抱きしめていた。


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