空に一番近い彼
◇◇◇

彼の声が聴きたくて聴きたくて、流れ星にお願いしたけれど、聴ける筈もなく、涙が溢れてきた。彼はそんな私をずっと抱きしめてくれていた。
彼の温もりが私を癒してくれる。
こんなに彼のことを好きになってしまって、もし、彼がいなくなってしまったら、私はどうなってしまうのだろう。

ただ、傍にいたい。傍にいて欲しいと、右手で左胸を強く掴んでいた。

彼の優しさに甘え、ずっと抱きしめてもらっていたけれど、このままでは彼が風邪をひいてしまう。ここは昼間の暖かさが残っていて、夜遅くまで比較的暖かい。けれど、さすがに冷えてきた。

お風呂上がりのようだったし、湯冷めなんかさせてしまったら大事だ。

「駿さん」

彼が (ん?)という表情をする。

『寒いでしょ、下で温かいものでも飲みましょう』

笑顔で頷いてくれた。

ジャスミンティーを飲みながら、時計を気にした。

『駿さん、明日も仕事、朝早いんでしょ』

『そうだな』

『もう、そろそろ帰りますか?』

『美咲は帰って欲しいのか?』

『どうしてそんなイジワル言うんですか』

『俺は帰りたくないからさ』

『じゃあ、今日は私の横にいてくれますか?』

『いいのか?』

『はい』

その日、私たちは狭いベッドの上で寄り添いながら眠りについた。
翌朝、彼のキスで目を覚ました私に『俺はもう行くから、戸締りしっかりするんだぞ』と、もう一度おでこにキスをしてくれた。

彼を送り出し、再度ベッドに潜り込む。彼の温もりと香りが私を包み込んでくれているようだった。

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