空に一番近い彼
「智紀、私、あなたの声が聞こえないから、これを使わせてもらうね。ほら、こうやって喋ったことが文字になるでしょ」

『みさきは強いな』

「私が?」

『うん 俺 みさきの耳が聞こえないの忘れてた 普通に喋ってたから』

「私、ちゃんと喋れてる?声量おかしくない?」

『おかしくないよ 昔と変わらない』

「私ね、聴覚失った時、声も封印したの。久しぶりにたくさん喋ってる」

『みさき 俺のこと恨んでないのか?』

「恨んではないけど、悲しかった」

『ごめんな 最低だった 俺』

「もう過ぎたことだよ」

『どうしてわかった 俺がみさきを道連れにしようとしたこと』

「あの時の私と同じだったから。聴覚を失うってわかって、本当に何も聞こえなくなった時の私と同じだったから」

『でも みさきは生きてる』

「うん。ここに逃げてきたけど」

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