空に一番近い彼
★★★

「いきなり何すんだよ!」

アメリカ留学から一時帰国している従兄妹のヒカリが、突然現れたかと思うと俺に飛びつきキスをしてきやがった。

「挨拶よ挨拶」

「ふざけんなよ!」

「そんなに怒らなくてもいいじゃない。子供の頃、ヒカリをお嫁にもらってくれるって約束したでしょうが」

「記憶にないな」

「何よ、照れちゃって」

「照れてねぇよ。仕事の邪魔すんな」

「もう帰れ」

「はいはい、わかりましたよ〜」

一体何しに来たんだよ!

俺は気を取り直し、明日の仕事の準備をする。今日の依頼分は既に終わった。早く終わらせて美咲に会いに行こう。

「駿」

現場から戻ってきた親父が俺を呼ぶ。

「何?」

「美咲ちゃん来てたのか?」

「ヒカリは来てたけど、なんで?」

「さっき帰ってくる途中、タクシーとすれ違ったんだが、ここら辺タクシーなんか滅多に通らんだろ。誰が乗ってんだって思って後部座席見たら美咲ちゃんだったんだよ。人違いか」

まさか… 不安がよぎる。

もしかしたらここに来たのかもしれない。ヒカリとのキスを見られたのか…
俺はいてもたってもいられず、別荘まで車を飛ばした。
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