空に一番近い彼
別荘のドアを何度も叩くが反応がない。
聞こえる筈もないのに彼女の名前を呼んだ。
やはり居ないのか。
引き返そうとした時、ゆっくりとドアが開いた。
開いた瞬間俺は彼女を抱きしめた。同時にソファーに腰掛けている男の姿が俺の目に飛び込んできた。

「誰だ」

彼女の背中に回した俺の腕は彼女の手によって外された。

「仕事はどうしたんですか?」

え⁉︎ 彼女が言葉を発している。

「仕事は終わった」

と言った瞬間、聞こえるわけないだろうとスマホを取り出した。

彼女はソファーの前に置かれたテーブルの前に行き「そうですか」と答えた。

え⁉︎ まさか聞こえているのか⁉︎

「美咲」

「なんでしょう」

会話が成り立っている。どうなっているんだ!

「俺の声が聞こえるのか?」

「聞こえるわけないじゃないですか」

「だったら俺の言ってること何でわかるんだよ」

「これが変換してくれているから」

彼女はテーブルの上にあったタブレットを俺に向けた。
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