空に一番近い彼
「は?そんな物があったのか?なんで早く教えてくれないんだ。いちいちスマホに打ち込まなくていいだろ」

「いちいちですか、そうですか」

「い、いや……てか、そいつ誰だよ」

「トモキです」

「は?トモキ?」

「はい。同じ大学に通って、同じ時間を過ごしてきました」

「同期か」

「はい、大切な同期です」

「今、彼と大事な話をしていました。取り込み中です。駿さんも取り込み中のようでしたので、帰ってきました」

「マジか…」

「マジです」

「駿さん、お忙しいようですので、お帰りになられたらいかがでしょう」

「美咲」

「私はトモキと話がしたいので、駿さんはどうぞ、あのスレンダー美人さんとお話しされてください」

「違う、あいつはそうじゃない。そんなんじゃない」

「言っている意味がわかりませんが」

「美咲、この人、もしかしてそのスレンダー美人とキスしてたのか?だから俺に尋問したのか?」

「トモキ、正解」

もう、この状況、最悪以外の何者でもない。

「美咲、聞いてくれ。あいつは俺の従兄妹だ。留学から帰って来たかと思えば、いきなりキスしてきやがった」

「なんで従兄妹があんなキスするんですか?全然スキンシップのキスじゃなかったし」

「それは俺もそう思う……いやいや、そうじゃなくて」

「あのぉ、お取り込み中申し訳ありません。俺、この場に居てもいいんでしょうか?」

「いいよ」
「ダメだ」

「美咲、なんでいいんだよ!」

「駿さん、なんでダメなんですか!」

「あのぉ、二人とも、深呼吸しましょうか、深呼吸」

トモキという奴に促され、深呼吸をしてしまった。
< 35 / 42 >

この作品をシェア

pagetop