空に一番近い彼
別荘に帰り着き、鍵を取り出そうとポケットに手を突っ込んだ。

ない

ポケットに入れていた筈の鍵がない。何度も何度も確かめたけれど、どこにもなかった。
私は記憶を辿る。一つだけ思い当たる節がある。

あの時だ。スマホを取り出した時、ストラップとキーホルダーが絡まり、スマホと一緒に取り出してしまったのかも知れない。
突然腕を掴まれ、落としたことに気づかなかったのかも…

このままでは中に入れないし、段々風も冷たくなってきたし、どうしよう…

今探しに戻ったら、また何か言われるかもしれない。伐採作業はいつ終わるのだろう。終わるまで待つしかないのかな。

私は溜め息をつき、ガーデンチェアーに腰掛けた。


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