麻衣ロード、そのイカレた軌跡❸/イカレ少女、磁場を産み落とす!
その3
麻衣



横田競子の入院している病院に着いた

自分がケガさせたヤツを見舞うというのも、なかなかおつがある

まあ、普通の人からすれば異常だろうけど…

伊豆から戻って翌日というのもしんどいんだが、自分の中では優先順位高いからな、コレ

ヤツは数日中には退院らしいからね

ホントはさあ…、部活命のノー天気なヤロウなんて、できれば近寄りたくないんだよ

なにしろ、あのカモシカ女が私の視界に入ってくるだけで汗臭いんだ

しっしって、追っ払いたいくらいなんだけどね、本来は

しかしだ…

ここにきて、もう無視できない存在になってきたんだ

あの女には、ぜひ今のうちに会って”見定め”が必要だ


...



横田は3階の個室に入院しているらしい

私は来る途中で買った花束を肩に乗せ、階段で3階へ向かった

ナースステーションで部屋を聞いて、さっそく半開きのドアをノックしたが声がしない

あれ?いないのか

私は室内を覗いた

やっぱりいないや

落ちつきのなさそうな奴だから、ちょこまか出歩いてんだろう

私は少し部屋の前で待つことにした


...



5分経っても戻ってこないわ

よし、まずはロビーでも見てくるか

すると…、いたいた…

カモシカ発見だ


...



あのヤロウ、小学生のガキと遊んでら

どうやら、風船でバレーボールごっこをしてるようだ

二人のはしゃいだ声がここまで聞こえるし

いやあ、でっかい声だなー、あの女

その声ってのも、やたら下品だし…

だから体育会系は好かないんだよな

ヤツは左腕を包帯で下げて、片手で”それー”とか、”アタックー”とかのたまってるよ(笑)

全く、見てる方が恥ずかしいわ

と、その時、私の眼前に赤い風船が飛んできた

”アタック!”

私は心の中でそう叫び、花束で風船を後方へ弾き飛ばした

視線はずっと前を見据えたまま…

そしてカモシカ女と目が合った

へへ…、いい挨拶代わりになったみたいだ…


< 19 / 33 >

この作品をシェア

pagetop