麻衣ロード、そのイカレた軌跡❸/イカレ少女、磁場を産み落とす!
その4
ケイコ



再検査の結果は特に問題なく、経過は順調らしいわ

で、明日退院になった

「お母さんが見えたら、ナースステーションに来てもらうように言ってね。先生の説明と、明日の手続き的なところとかもお話ししときたいから…」

「了解しました。たぶん、昼過ぎになると思います」

「じゃあ、お願いね。とにかくよかったわ、早く退院できて…」

若い看護婦さんは、にっこり笑って病室を出て行った

入れ違いに、消化器系で検査入院しているタカシ君が入ってきたわ

「お姉ちゃん、退院しちゃうの?」

「うん、明日ね」

「お姉ちゃんがいなくなったら寂しいな」

「なら、最後に風船バレーやろうか?」

「うん!」

小3のタカシ君は、すっかり私に懐いちゃってね…


...



二人は赤い風船をボールに見立て、ロビー脇で”バレーボール”に興じた

私は片手が使えないので、小学生相手には、ちょうどいいハンデだ

私が右左に”ボール”を打返すと、タカシ君はちょこまかと”ボール”を追いかけていく

その動きが妙にユーモラスでね…

ロビーのイスに座っている他の患者さんも、微笑ましそうにクスクスと笑ってる


...



「それー!アタックー!」

今度は、タカシ君の後ろにボールを思いっきり打ち込んだ

赤い風船のボールはタカシ君のアタマを大きく超え、後方へ飛んていった

そこへちょうど、こっちに向かってくる人がいた

若い女の人だ

風船はその人の顔に吸い寄せられるように近づく

”ボーン”

その人が手に持った花束で、風船はさらに後ろへ弾き飛ばされた

「あー…」

タカシ君は一瞬あっけにとられた様子だったが、すぐに風船の方向に走って行った

そのタカシ君と風船には見向きもせず、その若い女が私の方へと歩いてくるよ

あれは確か…、本郷麻衣…


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