麻衣ロード、そのイカレた軌跡❸/イカレ少女、磁場を産み落とす!
その9
多美代



私は北田の正面に歩み寄り、顔がくっつくくらいの距離でこう言った

「んならよ、時間まで待っててくれりゃいいじゃねえか?」

北田はガムを噛みながら、私をなめ回すように見てるわ

「それがさ、時間違えちゃったんだよ。1時間早く着いちゃってさ。したら、ちょうどOBの先輩方も早めにお越したいただいてたんで、せっかくだから作業に入ろうってわけでさ…。梅雨時だし、いつザーッとくるかわかんねえしってことでね。好意だよ、あくまであんたらに対しての…」

こいつら、確信犯だな…

「はー?トボケたこと言ってんじゃねえよ。あのな、バカ学校の大河原じゃ教えてくれないらしいから、この際、よく覚えとけ。そう言うの、”抜け駆け”って言うんだ、日本語ではな!」

アカネとルミは大笑いしてるよ、ハハ…

「何だとう、てめえ!」

おお…、顔真っ赤にした取り巻きが、鼻の穴おっぴろげてるわ

「おい、静美…、やめろって!…あのな、私ら、ホントにあんたらを気遣ってたんだぜ。なんでも、今日の集会ではさ、合田新総長の演説後に全員で右手挙げて、気勢上げるんだってな」

この場のリーダー格は、どうやらこの北田のようだ


...



「そんで、その練習、徹夜でやらされてるって聞いたもんだからよ。気の毒でさ、ウチら。大変だよなー、今時、独裁者に忠誠の宣誓みたいな、クサいことさせられてさ…」

ここまでくると、もう私は頭から湯気を立ててた

「ハハハ…、久美さん、いっそだから、練習の成果をここでお披露目してもらったらどうですか?」

「おお、いいねえ。あんたら、先輩らが来る前にリハーサルやってみろよ。採点してやるからさ、ウチらが。遠慮いらねえぜ、ヘヘヘ…」

「多美!こんな外様連中に、ここまで好き勝手言われたら、もう我慢できないだろうが!」

アカネは、こぶしを握って歯ぎしりしてる

フン…、アカネに言われるまでもないさ

こいつら、言わせておけば図に乗りやがって!

もうブチ切れだ‼





< 31 / 33 >

この作品をシェア

pagetop